ネタ帳から

デザインを起こす上で最も大切なものは「その気」です。

私が20 代の頃のはなしです。通勤途中の駅に貼られていたポスター に激しい衝撃を受けました。
ファッションブランドのものなのですが、黄色と黒との大胆な構図が突き刺すように迫ってきたのです。完全にそそられました。
その日からというもの、来る仕事という仕事は黄色から始まりました。商品が仏事用であろうと何であろうと例外なく、ほとんど全て黄色と黒で構成しまくり、当然ながらデザインの決定、採用率は救いようのないほど低いものでした。ただただ気分だけが高揚していたことを思い出します。 若気のナントカ……。
でも、今でも「その気」が大切なことに変わりありません。
ただし、いろいろなご案件に真摯に対峙する「やる気」という意味ですよ！

さて、その高ぶる気持ちを空回りさせないためにもデザインを考え る段階にできるだけ時間を裂きたいものです。
パッと直感がひらめくのは素晴らしいことですが、勢いでどんどん進んでしまい、また周りも見えていないため、ツメの部分で甘くなったり、自分本位ものになってしまう危険が大きいのです。デザインを「固める」のはあくまでも最後です。
デザインの打ち合わせの際中に早くも自分の中でイメージができあがってしまった時などは気持ちを抑えるようにしています。大切にしつつ、注意しつつ、といったところでしょうか。

そうした直感がある時も、ない時も、私の場合はネタ帳を見ています。 これは雑誌などで気になったりしたグラフィックなどをスクラップしているものです。ですからその時いただいた案件とは一致していないものがほとんどです。 例えばラーメンの袋のデザインを考える時、売り場に行ってラーメンを見たり、あるいは本屋でラーメン関係の雑誌を見たりします。が、それだけの場合、発想の範囲を狭めてしまうことが多々あるのです。

本来案件とは関係のなさそうなスクラップの中には、違った切り口への自由と、進んでいたアイディアの検証がたくさん詰まっています。